She Said She Said

  • KEI
  • 2011.05.02



「温めました」

彼女は笑顔でそう言った。

やや舌足らずで明瞭さに欠ける発音ではあったが、そう言ったのだと思う。

もしも。

もしも彼女がニワトリだったなら。

ボクは「よく頑張りました」と答えただろう。

もしも彼女が秀吉であったのなら。

ボクは「猿!オヌシ気が利くではないか!」と答えただろう。

しかし現実には、彼女は店員で、場所はコンビニエンスストアのレジであった。

支払いを済ませたボクに、「温めますか?」ではなく、いきなり「温めました」という過去完了形で彼女は提示する。

果たしてこれはどういうことなのか?

そして、それよりも何よりも重要なのは、ボクは弁当等を買っていないということだ。

ボクと彼女の間にあるものは、煙草とコーヒー。

そして「温めました」の一言。

それだけだ。

言うまでもないことだが、それらは温まってなどいないし、こちらも頼んでいない。


さては・・・。


とんちだな!

ボクがそう考えたのも無理からぬ状況ではないか。

昔観たとんちの得意な小坊主のアニメを思い出す。

とんち合戦の前には、禅問答に由来する「そもさん」「せっぱ」なる言葉をお互いに掛け合う。

であるならば、彼女は「そもさん」を言い忘れているのではないか。

確認の意味も込めて、恐る恐る

「そもさん?」

とつぶやけば、驚いたことに彼女は「ハイ」と答えた!




・・・いや、正確には「・・・ハイ?」だった。

しかもその様子は怪訝。

勇み足だったかと、後悔し

「・・・いえ」

と口ごもりながら、そそくさと店を出ようとした時、店内に再び彼女の声が響く。


「温めましたー!」







・・・「ありがとうございました」 かよ!

滑舌悪すぎるって!!





K E I

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